待望の一発だった。仙台の青空に響いた快音。ソフトバンクの周東佑京内野手が15日、敵地・楽天生命パークで行われた楽天戦で今季1号となる2ランを放った。2点リードの6回2死一塁で右翼スタンドに届く一撃。「完璧でした」と自画自賛の一打で、勝利を大きく手繰り寄せた。
四球で出塁した甲斐拓也捕手を一塁に置いて打席に入った。高めのボールを2球見極め、2ボールとなってからの3球目だった。真ん中高めに入った松田のツーシームを捉えた。「あんまり大振りしないでうまく打てたのかなと思います」という打球はグングンと飛距離を伸ばした。
「今までちょっとボールを見すぎて、いろいろ迷っているところもあったので、3打席目から1球目から打ちにいこうかなっていうところで良かったのかなと思います」。5回の第3打席で二塁打、9回の第5打席でも左前打を放ち、この日は5打数3安打。今季30試合に出場して打率.317と高いアベレージをマークし、リードオフマンとしての役割を十分に果たしている。
目覚ましい働きを見せる今季。では、昨季までと何が変わっているのか? 紐解いていくと、打撃スタイルで明らかな変化が見えてくる。
その1つがフライの大幅な減少だ。セイバーメトリクスの指標などでデータ分析を行う株式会社DELTAのデータによると、2021年には41.8%、昨季でも35.8%あったフライの割合が今季は27.1%まで低下(今季のデータは14日終了時点)。昨季は8.5%だったライナーの割合が14.1%まで上昇している。また、逆方向への打球が昨季の21.3%から31.1%まで増えている。
周東自身も「(フライの割合は)下がっていますね、だいぶ」と、その変化を感じている。「あまり意識はしてないですね、そんなに。逆にあまり転がそうとも思っていないですし、本当にライナーを打ちにいっている中で、そこが下がっているのかなとは思います」。強くて低いライナー性の打球を増やそうと取り組んできた成果で、逆方向に、ライナーを打つという意識が、データにもしっかりと表れている。
もう1つ、大きく変化しているのが、打球の強さだ。全打球に占める強い打球の割合を示す「Hard%」はキャリアで最も高かった昨季の33.5%から42.4%に上昇している。「状況に応じてですね。打ちにいくところと、しっかり当ててでも前に飛ばさなきゃいけない場面ってあると思うんで、うまくそこの使い分けが、今できているのかなと思います」と語るが、その打球の強さが、打撃向上にも一役買っている。
ゴールデンウィークが終わり、コンディション不良もあって2試合に欠場した。11日のオリックス戦(宮崎)でスタメンに復帰したが、その後の2試合は7打数1安打。「ちょっと打っているところ、打っていないところがハッキリしている。攻め方自体いろいろ変わってるんで、そん中でうまく対応できてないなっていうのはすごい感じてるところではあります」。しっくりきていない中で出た3本の安打だった。
小久保裕紀監督いわく、状態はまだ「完全じゃないですよ」という。万全ではない中で、2回には打球を追ってフェンスに激突し、ヒヤリとするプレーもあった。チームのために必死にプレーする選手会長。活躍の裏には、取り組んできたことの成果が詰まっている。