小久保監督に“謝罪”…今も胸に響く厳しい言葉 防御率0.00、三浦瑞樹を変えた出来事

ソフトバンク・三浦瑞樹【写真:竹村岳】
ソフトバンク・三浦瑞樹【写真:竹村岳】

1年目は2軍で11試合に登板も…2年目は5試合登板に「自分でチャンスを潰した」

 今年が最後という覚悟で、3年目を迎えている。いまだに続けている無失点こそ、成長の証だ。ソフトバンクの育成、三浦瑞樹投手はウエスタン・リーグで3試合、17イニングを投げて無失点。「初心に戻って、1人1人のバッターを打ち取ろうと思って投げています。技術的にはそんなに変えていなくて、1球1球を大切に投げていこうというところです」と好調の要因を語る。その舞台裏では、小久保裕紀監督からかけられた厳しい言葉が原動力となった。

 神奈川県大和市出身。高校は岩手県の盛岡大附属高に進学し、甲子園にも出場した。東北福祉大でもキャリアを積んで、2021年のドラフト会議で育成4位指名を受けてホークスに入団した。サウスポーから繰り出す直球は最速で147キロ。カーブ、スライダー、チェンジアップ、カットボールを操る先発タイプの投手だ。

 1年目の2022年は2軍でも11試合に登板して4勝0敗、防御率2.60と結果を残した。しかし、ウエスタン・リーグの公式戦で1試合に出場できる育成選手は5人まで。2軍監督だった小久保裕紀監督も「育成枠の問題が『5』って少ないよね。これだけ抱えていると感じます。だって54人いて5人しか使えないので。現実問題」と話していたように、2023年の三浦の2軍戦登板は5試合にとどまった。防御率6.30と結果を残せなかった昨年を、どのように受け止めているのか。

「昨シーズンは自分でチャンスを潰していたので。今年はチャンスをもらえている。そこを逃さない、ずっと投げ続けるという気持ちで今はいます」

 2023年、登板数でチームトップだったのは中村亮太投手の53試合。渡邊佑樹投手も21試合に登板するなど、2軍ですら育成選手の層は厚かった。腐ったりしたことも「少しはありましたけど」というが「絶対にもう1回チャンスは来ると思っていたので、腐らないようにやっていました」と前だけを見てきたつもりだ。同じ失敗を繰り返さないという意識が、しっかりと2024年の結果となって表れている。

「1年目がよかったので、その1年目みたいにずっと緊張感を持ちながら投げています。去年も一緒だったんですけど、それ以上に緊張しながら今は投げている感じです」

 2軍監督だった小久保監督の言葉も、胸に響いた。三浦は2022年のオフにオーストラリアに渡り、12月も試合の中で経験を積んできた。海を渡る前、小久保監督にこう言われた。「お前、こんなんでウインターリーグに行っていいのか」「そんな結果でウインターリーグに行っても意味がないんじゃないのか」。その時は10月、宮崎で行われていたフェニックス・リーグに参加していた時だった。自分の気持ちを見透かされたような言葉に、背筋を伸ばすしかなかった。

「シーズン中によかったのに、フェニックスはあまり良くなかったんです。『なんでリーグ戦でよかったのに、こうなっちゃうんだ』というようなことを言われて。『すみませんでした』と言うしかなかったです。厳しいことも言ってくれましたし、それは本当にありがたい。ちゃんと見てくれているからそういうふうに言えるんだと思ってやっていました」

 誰よりも野球に向き合う小久保監督の言葉なら、真っ直ぐに受け止めるしかない。「すみませんでした」という言葉が口をついた一方で「ちゃんと見てくれている証拠だと思いますし『次は見ておけよ』ってその時は思いました」と、反骨心を忘れることはなかった。3月19日に仲田慶介内野手らが支配下登録されて、支配下は65人。残りの5枠に入るためにも、ゼロという結果でアピールし続けてみせる。

 今季が大卒3年目。シーズンが終われば、自動的に1度、自由契約にもなる。「もう3年目。ここで結果が残らなかったら来年いないなっていう気持ちで。試合前も試合中も、自分で緊張を出している感じです」と、あえて自分自身に重圧をかけ続けている日々。自分自身のために、そして小久保監督を最高の意味で見返すためにも、覚悟を持ってマウンドに立ち続ける。

(竹村岳 / Gaku Takemura)