キャンプで導入された“小久保流働き方改革” 「みんな気持ちよく働いてもらいましょう」

ソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:小林靖】
ソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:小林靖】

キャンプ途中から全体でのアップがなくなり、トレーナーのケアも夕食前に終了

 ソフトバンクは23日、宮崎市の生目の杜運動公園で2月1日から行ってきた春季キャンプを打ち上げた。全体練習終了後に選手会長の周東佑京内野手の音頭で「一丁締め」を行い、23日間のキャンプが終了。チームは宮崎に留まり、24日の台湾プロ野球・楽天モンキーズ戦を皮切りに、4試合の対外試合を戦う。

「渡邉陸と野村勇の怪我がありましたけど、怪我人が少なかったっていうのは良かった点かなと思います」と小久保裕紀監督が振り返った今春のキャンプ。首脳陣がガラッと変わり、これまで当たり前のように広がっていたキャンプの光景も変わった。指揮官の意向により、より“働きやすさ”が追求されたキャンプだった。

 春のキャンプといえば、チーム全体でのストレッチやウオーミングアップから1日が始まり、選手が泥だらけになりながら白球を追い、日が暮れるまで過酷な練習に汗を流す、というのがこれまでの景色だった。だが、今春のキャンプ途中からウオーミングアップは選手に一任され、チームとして動くスプリントまでに各自、体を温めるスタイルに変更。全体練習はだいたい14時頃には終わり、特打や特守もその日の昼までに各自が名乗り出る“立候補制”になった。

 キャンプのスタイルが変化したのは時代の流れでもある。発案した小久保監督はこう語る。

「野球が始まってからキャンプの形って変わっていないじゃないですか。でも、それを誰も正解だとは思ってなくて。キャンプで(体を)作るぞっていう感じだったと思うんですけど、作るもなにも、今の子たちってほとんどオフでも継続的にトレーニングしているんで、作る必要ないんじゃないの、と。ユニホームを着るだけでも、かなり負担がくるんで、僕も怪我したんですけど、何か“ザ・キャンプ”みたいな感じで入って、怪我するみたいなのは避けたいなっていうところからです」

「普段シーズン中にやっているようなウオーミングアップ、(1日の)入りをちゃんとする。キャンプだけ特別なことをしていますっていうウオーミングアップとか朝の使い方じゃなくて、普段通り、自分のバッティング練習に合わせてみんな体を作る。ある意味、1軍の選手だから、それでいいという判断ですよ。好評でしたね、当たり前だけど(笑)。ピッピピッピ、笛吹かれて(朝から)20分もやらされたらね」

 かつてキャンプは1年間を戦い抜くための土台作りの場だった。ただ時代は変わり、オフの間も選手たちは自主トレーニングをしっかり行い、2月1日のキャンプインの段階でかなり体を仕上げてきている。そんな状態で迎えるキャンプであるにも関わらず、何十年も前と同じ進め方である必要はない、というのが小久保監督、指揮官と話し合った城島健司・会長付き特別アドバイザー兼シニアコーディネーターの考えだった。

 1軍と2軍での違いもある。1軍はこれまで経験、実績を積み、ある程度、自分で何をやるべきか分かっている選手たちの集まり。「1軍なんで、もう自分たちで考えてやれる選手たちを預かっているんで、そこはまさにコーチングの導きの方。2軍でやっていた時のティーチングとは違うんで。こっち(全体で)の練習が少なくても、ウエートを含め、朝も早くから来てやってるし、もう個人でやるのが1軍選手ですよ」。新加入の山川穂高内野手やベテランの中村晃外野手、牧原大成内野手をはじめ、早朝から球場に入って個々でトレーニングに励んでいたように、各々がやるべきことをこなしていた。

 キャンプで“働き方”を変えたのは選手だけではない。「トレーナーさんたちの働き方改革的なところで、食事前には全部治療を終えられたとか、比較的、皆さんが過ごしやすかった1か月じゃないかなと思いますけどね」と小久保監督は明かす。全体練習を早めに終わらせることで、選手のケア、治療の時間帯が分散。これまでは深夜まで行っていた選手のケア、治療が夕食前にほぼ終わり、裏方の負担も軽減された。

「朝の5時半とか6時くらいから(ケアを)やって、夜中11時、12時までやって、なんかトレーナーだけ異様に働くでしょ。それも含めて、全体練習が終わってこっちでほとんど(ケアを)終わらせれば、帰ってやる選手は少ない。みんな気持ちよく働いてもらいましょうっていうことです」

 選手もスタッフも気持ちよく働き、そして1年間、チーム全体で戦い抜く。フロントも含めたチームの一体感を求める小久保監督らしい取り組み。4年ぶりのリーグ制覇を果たした時に、この“改革”が成果となる。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)