支配下復帰ならず「メンタル的にもたない」 育成・中村亮太を支えた小久保2軍監督の信頼

ソフトバンク・中村亮太【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・中村亮太【写真:藤浦一都】

ウエスタン優勝を決めた29日の中日戦で勝ち投手になった中村亮太

 ソフトバンクの2軍が3年ぶり14度目のウエスタン・リーグ優勝を成し遂げた。9月29日にファーム本拠地のタマスタ筑後で行われた中日戦。初回に1点を先行されるも直後に一挙に5点を奪って逆転。しかし、5回に追いつかれるヒリヒリする試合展開だった。8回に押し出し四球で勝ち越し、9回を守護神の尾形崇斗投手が締めて歓喜の瞬間を迎えた。

 勝利投手になったのは、8回を無安打2奪三振に抑えた育成の中村亮太投手だった。今季2軍のブルペンを支えた右腕にとっては、52試合目のマウンド。登板数は2位の投手に8試合差をつけ、同リーグのトップに立っている。

 中村亮は2年目だった昨年7月に支配下登録されたが、同年オフに戦力外を通告されて育成契約に逆戻りとなった。再び這い上がろうと並々ならぬ思いで挑んだ今季は中継ぎとして、何度もチームのピンチを救った。だが、7月末の支配下登録期限までに2桁背番号への復帰は叶わなかった。

 当時の心境を、「今年は(支配下登録の)期限が切れて、もう上に上がることはないとなった以上、目指せるものは優勝しかなかった。優勝をモチベーションに切り替えないと、メンタル的にもたないと思ったんです」と語る。

「ウエスタン優勝を目指して投げていくということと、球団にアピールするのはもちろん、他のところもいろいろ見てくれている中で、成績を安定させていきたいと思いました。たくさん登板するチャンスをもらったので、しっかりいい形で終われるように頑張ろうと思ってやってきました」

 育成選手にとって7月末は節目の時。目指していた支配下登録が叶わなければ、落胆の色が見えても仕方がない。支配下を経験し、再び育成となった中村亮であればなおさらだ。それでも高いモチベーションを示し、好成績を残し続けることができた。

 優勝を決めた後、中村亮は清々しい、晴れやかな笑顔を見せていた。今季の53度の登板は厳しい場面の連続。満塁や走者が三塁にいる状況など、かなり厳しい場面で“火消し役”としてマウンドに送り出されてきた。

 当初は緊張の連続だったが、徐々に2軍首脳陣からの期待の表れだと理解するようになったという。「抑えたり、結果が出なかった時もいい経験なので、この経験を絶対にいつか1軍で生かしたい。いずれはそういう場面で投げていかなきゃいけない。ましてや2軍なので、抑えて当たり前。強い気持ちを持って挑んでいます」と話す。

 育成から支配下へと昇格し、再び育成へ、という悔しい経験も含め、中村亮にとってこの1年間は大きな経験を重ねたシーズンになった。右腕を信頼して厳しい場面で送り出してきた小久保裕紀2軍監督には「いつも厳しい場面でいっぱい作らせてごめんな」と声を掛けられたという。

 初回からブルペンへ行き、試合中に3度、4度と肩を作ることもあった。ただ、それを負担に思ったことはない。「作らせてもらってるっていうのは、すごく今、信頼を得ているんだなと感じますし、逆にそんなこと言ってもらったら絶対に抑えたい」。むしろ意気に感じて腕を振ってきた。

 自身に矛先を向ける、そんな小久保2軍監督だからこそ、中村亮も胴上げしたいとずっと願ってきた。「小久保さんの言葉で自信持って投げられるところもあった。絶対に勝って胴上げしたかったんです」。願いは叶った。それだけでなく、そんな記念すべき一戦の勝利投手に名を刻んだ。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)