自分の実力、現在地を思い知らされた。ソフトバンクの松本晴投手は、2軍で先発ローテーションに加わりながら、経験を積んでいる。大阪に生まれ、鹿児島の樟南高、亜大を経て昨年のドラフト会議で5位指名を受けた。離脱することなくマウンドに立ち続ける中で「1軍では通用しない」と感じさせられた面があったという。今の心境、取り組みについて単独で迫った。
1軍では3試合に登板して0勝1敗、防御率7.11。8月27日の楽天戦(楽天モバイル)で初先発も、3回1/3を投げて5失点で黒星を喫した。ウエスタン・リーグでは16試合に登板して1勝2敗1セーブ、防御率2.98。「怪我せずにここまで来られているのはいいところかなと。怪我しないように考えてやっているのが、ローテーションを守れている要因かなと思います」と分析する。
自分なりに管理をしてきたことが、怪我の予防につながっている。大切にしているのは睡眠だといい「その他にも交代浴とかはしているんですけど、最低限8時間は寝るようにしています」。翌日の起床時間も逆算しつつ「夜の10時くらいには眠たくなるようにお風呂に入ったりして」。寝る時は必ず長袖、長ズボン。枕も買い替えて、最善の睡眠を求めて工夫を重ねているようだ。
怪我をしないという“最低限”はクリアして、1年目を駆け抜けられそうな時期まで来た。ここまでを振り返り、2軍と1軍の決定的な差とは、どんなものを感じたのか。
「(1軍は)簡単に三振してくれない。追い込んでからも苦しくなって、カウントがどんどん深くなってしまう。自分で苦しくなっていくのが、2軍との違いでした。(楽天の浅村選手は)ボール球を振ってくれないし、際どい球もファウルにされて。もっと力をつけないと。2軍ではある程度は投げられたとしても、1軍では全く通用しない」
シンプルに、打者のレベルが全く違う。その一流の打者たちを圧倒できるものがないと、自覚もしている。直球の最速は148キロ。球種もカーブ、スライダー、チェンジアップなど6種を操るが「まだまだ2軍でも抜けた数字っていうのがなくて、満足はしていないです」とキッパリ。数字としても、武器としても、抜きん出た特徴を身につけていきたいと言う。
1軍の先発投手なら、圧倒的な直球や豊富な変化球など、長いイニングを投げるために秀でた部分が必ずある。中継ぎならもっと顕著で、空振りを取れて、圧倒できる投手だけが生き残る領域だ。松本晴も「バッターの嫌なボールを持っておかないと“怖くないピッチャー”になってしまう。そこをどうするか……」と“器用貧乏”ではいけないこともわかっている。突きつけられた明確な課題と向き合う日々だ。
「ばんばんと空振りを取るタイプでもないし、どちらかというと打たせて取る。要所で三振を取るっていうのが自分のスタイルなので、全体的なレベルを上げていくことですね。(大切なのは)全部です。球速を上げるためにウエートもやっていますし、それがフォームにも生きてこないと。変化球も毎試合いろいろ試したり……。その中でよかったところを継続する感じです」
身に起こる全てが初めてのルーキーイヤー。先輩の姿勢を見て、驚いたというのが試合への準備だ。「相手を研究する意識というか、めちゃくちゃ相手バッターの特徴とかデータを見てやっている。それを見て、自分がそこまでやっていなくて、ただビデオを見ているだけだった」。球種別やコース別、さらにはそのデータを試合の中で生かすために自分の中に落とし込まないといけない。先輩の徹底した姿が、印象深く残っている。
「データ班に聞いたりして、それを試合中に見て、投げている」。具体名が出たのは有原航平投手と、ロベルト・オスナ投手。チームトップの8勝、守護神として君臨する2人でも「ここまでレベルの高い投手でも、そんなことするんだなって。自分、全然やっていないって本当に思いました」。8月28日に登録抹消となってからも「球種の割合とか、絶対に確認するようになりました」と自分なりに“予習”は欠かさなくなったのだから、1軍での経験は強く生きている。
実力はもちろん、姿勢の面でもまだまだ成長していかないといけない。本人が一番痛感している。「球速とかは1か月とかで急には上がらないので。今できることを精一杯やりたいです」と今後を見据えた。課題をしっかりと把握して、自分だけの武器を磨いていく。そんな秋にする。