高校時代は投手として日本代表候補に名が挙がる速球派投手だった小林が、身体能力の高さを買われて内野手としてソフトバンクに入団した。だが、プロ入り3年間で思うような結果が出ず、昨秋に戦力外通告を受け、育成契約を結んだ。再出発する上で、本人の希望もあって、投手に再び挑戦することになった
ただ、リスクや可能性も踏まえた上で、春先までは投手、野手の二刀流としてプレーし、その後、方向性を定める予定だった。だが、夏を目前にした現在も小林は投手、野手の両方で試合に出続けている。現在の本人の思いを聞いた。
「今、すごく楽しいです」
そう語る小林の表情は輝いている。現在は“ピッチャー寄り”の二刀流だという小林。練習日は投手練習に入り、試合日はその日の出場ポジションに対応し、調整している。5日の四国IL愛媛との3軍戦では5回まで遊撃手として出場。途中交代した後にブルペンへ向かい、翌日の登板に向けた準備を行った。試合中の二刀流こそ無いが、投打でフル回転している。
ここ最近、3、4軍では怪我人が多いこともあって野手が不足していた。特に二遊間の選手が少ないこともあって、小林が遊撃手で試合に出ることも多かった。「(野手が)足りないのもそうですけど、せっかくチャンスもらってるんで。投げる方がメインですけど、打席だってアピールできればなと思っています」。投手が基本線ではあるが、可能性ある限り全てに全力を注ぐ。
さらに「ここに来て、ちょっと打つ方も良くなってきました。何も考えてないっていうのがいいのかもしれません」と笑みを浮かべる。昨季は特に打撃面で苦しんだ。結果を求めるがあまり迷走し、そのままシーズンが終わってしまった。今季は明らかに昨季よりもノビノビと、野球を楽しみながらプレーしている。
「打撃のことは何も考えてなくて、練習も(投手の練習しか)していないんですけど、ここに来て気持ちって大事なんだなと改めて思いました。言い方は悪いですけど、良い意味で何も考えてない。だから、それが結果に繋がっているのかなとは思います」。精神面がプレーに影響するということを、身を持って実感する。
ただ、あくまで目指すのは投手としての成長。自主練習の時間も全て投手のトレーニングに費やしている。マシン打撃やティー打撃も試合前練習のみ。それでいて、試合では豪快なフルスイングを見せ、結果も残しているのだから、やはり身体能力はずば抜けている。
投手再転向後は早々と150キロをマークし、この3か月ほどで、最速は153キロまで上がった。「右のオーバースローはいっぱいいるので、球速的にもっと上がっていかないと、上にも行けない。タイプ的に速球派なので、フォークを今練習中なのと、スライダーももうちょっと精度を上げていければ、もっといけるかなっていう感じはあります。ストレートももちろんですけど、スライダーとフォークですかね」。実戦で投げながら日々浮き出た課題に取り組んでいる。
3年間、野手としてプレーしたことで変わったフォームも徐々に投手のそれになってきた。「最初の頃は『見やすい』『まだ野手だね』って言われていたんですけど、最近やっと『ピッチャーになったね』って言われました」。筑後でイキイキとプレーしている小林。可能性溢れるプレーに今後も注目していきたい。