17日にPayPayドームで行われたウエスタン・リーグのオリックス戦。最終回に登板すると、先頭打者の初球から4球続けて159キロをマーク。1回を投げて1安打1四球無失点に抑えた。最後は相手打者のバットをへし折り「ドームでプレーすることは自分としても大きな意味があります。少しずつステップアップして、1番の目標は1軍で登板することなので、そこに向けて頑張りたい」と屈託のない笑顔を浮かべていた。
昨秋から“支配下昇格の筆頭候補”と高く評価されていたフェリックス。宮崎のB組で迎えた春季キャンプで、早々に右大円筋損傷で離脱してしまった。「起こることには何事にも意味があると思いますし、怪我をしてしまったその時間を自分のために使うことができました。悪いことが起こった後、きっと良いことも起こると思って準備してきました」。無念の離脱となっても、前向きにリハビリ期間を過ごしてきた。
復帰後、2軍では2試合目だったこの日の登板。フェリックスは「自分が思っていたより、パフォーマンスとしては良くなかった。皆さんも知っている通り、速い球はもう投げられるので。1番大事なのはコントロールと相手を支配していくスタンス。そこにもうちょっとフォーカスしたい」と反省が口を突いた。
160キロに迫る剛球を投げながら、ことごとくファウルにされるなど、1イニングで31球を要した。フェリックス自身も「ファウルを打たれることが多い。バッターも速い球に準備しているので、そこに負けずにどんなカウントでもコースに投げていけるコントロールを身につけなきゃいけない」という。田之上慶三郎2軍投手コーチは「変化球がもうちょっと良くなれば、あの真っ直ぐも生きるけど、バッターは真っ直ぐだけの対応になっているからあれだけファウルになっている」と説明。今後、支配下昇格を目指す上での課題はハッキリしている。
これを克服するため、変化球のレベルアップに必死に取り組んでいる。カーブ、スライダー、チェンジアップが持ち球で、フォーク、ツーシーム、シンカーを練習中。変化球のほとんどが来日してから覚えたもので、ドミニカでは「基本的に真っ直ぐ。スライダーとかチェンジアップもあったけど、ほとんど投げなかった」。日本の野球に順応するためにも“フォーク系”のマスターを目指す。
クイックや牽制といった技術の習得にも前向きだ。田之上コーチは「一生懸命練習もするし、飲み込みも早い。セットポジションでのクイックの速さとかはもう問題なくなってきているので、あとは投球の中でその精度を上げられたら」と評価する。多くの外国人投手が苦戦する部分だが、「何でも吸収しようという姿勢が伝わってくる」(田之上コーチ)と性格面での順応力の高さもある。
憧れの投手にはリバン・モイネロ投手と千賀滉大投手(メッツ)を挙げる。同じスペイン語を話すモイネロはチーム内でも1番近い存在。普段から電話をしたり、冗談を言い合ったりする関係でもあり「2つ目の武器を持て」という助言を受けている。「真っ直ぐだけじゃなくて、しっかり変化球でカウントを取ったり、相手を支配していけるようなピッチングをすることが大事だよ」との言葉も胸に刻み込まれている。
支配下登録の期限は2か月後に迫る。フェリックスの場合は外国人枠の兼ね合いもあるが、期待が大きいのは確かだ。「番号を(2桁に)変えるということが1番の目標なので、そこに向けてやりたい。2桁であればいつ、どんな時でも1軍でプレーするチャンスがありますけど、 3桁だとそのチャンスもない。早く変えたいという気持ちでいます」。目を輝かせつつ、夢舞台を目指している。