ウエスタン・リーグで打率.095…明石コーチが見る上林誠知の現状は?
栄光も挫折も経験した明石健志2軍打撃コーチだから、送れる言葉。誰しもがわかっていることではあるが、プロ野球選手である以上、ユニホームを脱ぐまでは前だけを見て進まなければならない。2軍で再調整中の上林誠知外野手の現状に、明石コーチは「自分が変わるしかない」とキッパリと言い切った。
今季が10年目の上林はオープン戦で打率.277と結果を残して開幕1軍の切符を掴むも、シーズンでは打率.176と低迷した。4月24日に出場選手登録を抹消され、ウエスタン・リーグでも打率.095と結果を残せずにいる。現在の状態はいかほどなのか。ウエスタン・リーグの中日戦が雨天中止となった6日、明石コーチに尋ねた。
「力はありますよ。ただ噛み合っていないというか。ネックになっているところはある」と解説する。ファーム降格以降に言葉を交わしたといい、表情については「いつもあんな感じですけど、いつもよりは暗いかな」と印象を語る。2018年には22本塁打を放った実績があり、ある程度の打撃の形は完成しているはず。「それ以上に……」。明石コーチは言葉を選びながら、プロ野球選手として求められることを指摘した。
「実際にホームランを20本以上を打っても、過去が良くても今がダメだったら意味がないので、この世界は。王会長もよく『過去は過去』とよく言われますし、だからどう変化していくかが問題。何年も結果が出ていないとなると、やっぱり自分で変化していかないと。それが厳しい話というか、プロ野球をやっていた人間からすれば普通のこと。自分で責任を取るしかない世界なので。自分が変わるしかない」
データがどんどんと活用される時代。変わっていく相手の攻めに対応が必要であり、自分の体に応じた変化も必要となってくる。明石コーチは「試合に出れば出るほど研究もされるし、歳をとれば老いていきますよね。それに付き合っていくのも、長くやりたいなら必要なこと。ずっと同じことをして、活躍できるならみんなできる」という。自分自身の“アップデート”が追いつかなければ、置いていかれる世界だ。
「いくらこっちが教えようとしても、自分が変わろうとしない限りは……。跳ね返ってくるのは全部自分なので。過去にとらわれているんだとしたら、僕は難しい部分があるんじゃないかなと思います。そこがネックになってくるんじゃないかなというのはあります」
明石コーチは現役時代に通算648安打を放った。ユーティリティプレーヤーの“元祖”と呼ばれた一方で、腰の手術など数多くの怪我も経験した。相手にも、ベンチの起用にも、自分の体調にも対応して結果を求めてきた。「僕の場合は、痛いとか言っていられなかったし、言いたくもなかった。痛い中でどうやるかしか考えていなかったですし、痛いなら痛いなりに、痛くないところを探していた」と経験を語る。
「アップデートするのは選手だけじゃなくて、こっちの監督やコーチもしていかないといけない。やるのは僕らではなく、選手なので。選手の体やメンタルだったりがいい状態で、試合を迎えさせてあげるのが僕らの仕事だと思います」
今は、一緒になって打撃を修正し、向上させようとしているところ。「ある程度、1軍の経験もあるということは、自分の課題は明確になっているはず。それに向けてやっている」。上林の誠実な性格をよく知った上で口にした明石コーチの言葉は、きっと届く。
(竹村岳 / Gaku Takemura)