水谷瞬の壮大な「野球をやる意味」 外国人選手を見て思い出した“楽しむ気持ち”

ソフトバンク・水谷瞬【写真:竹村岳】
ソフトバンク・水谷瞬【写真:竹村岳】

4月15日は「ジャッキー・ロビンソン・デー」…大谷翔平らが背番号42を着用

 4月15日(日本時間16日)は、近代メジャーリーグで初の黒人選手としてプレーしたジャッキー・ロビンソンに敬意を表する「ジャッキー・ロビンソン・デー」。メジャーの全選手が背番号「42」を着用し、大谷翔平投手(エンゼルス)ら日本人選手もお揃いの番号でプレーした。野球界にとって特別な日。自身のインスタグラムを動かしたのが、ソフトバンクの水谷瞬外野手だ。

 ナイジェリア人の父、日本人の母のもとで生を授かった。ロビンソンの存在には「日本で生まれましたけど、野球はアメリカからきているスポーツ。彼がいなかったら僕ももしかしたら野球ができていないかもしれない。リスペクトする存在です」と感謝する。インスタグラムへの投稿も「まだまだ日本では知られていないので、そういう発信もできたら」という思いが突き動かした。

 チームでもこれまで、ウラディミール・バレンティン外野手やジュリスベル・グラシアル内野手、アルフレド・デスパイネ外野手らと仲が深かった。「そういう人らと話していた方が、楽といえば楽ですね」。3選手ともに、1軍でも実績を残した助っ人たち。印象に残っている姿勢について、水谷はこう語る。

「切り替えというか、楽しむところは楽しむ。やるところはやる。野球っていうのは僕らにとってはビジネスのツール。でも野球を始めた最初は、楽しいからじゃないですか。楽しむかつビジネスっていうのは感じました」

 自分なりに感じる日本人選手と助っ人の違いもある。「日本人は、野球はチームスポーツですけど、周りに目を配りすぎというか。そういうのが違う感じはします」。野球に対するプロ意識も、助っ人たちは高い。水谷自身も「オフにドミニカ(共和国)にいってみて、周りには同じような人ばっかりで。小さいことを考えている感じがしました」と、外国人選手から学んだものは自分の中で生きている。

 幼い頃から、周囲からの視線を感じる人生だった。「僕が小学校の頃は正直、嫌だった。僕は社交的なタイプだったからよかったですけど、内気な子たちは絶対にいるので」とハーフとして生まれたことを受け入れて歩んできた。「子どもなので悪気がなかったとしても、少なくとも僕には(言動が)刺さることもあったし、誰かに相談もできなかった」。だからこそ、願うことは1つだ。

「バスケの八村塁選手もあれだけテレビに出て世界で活躍している。少しでもそういう同じような子どもたちにとっても、頑張っている人がいることを(伝えたい)というか。僕もそんな姿を見せていけたら。ちょっとした影響力かもしれないですけど、それが野球をやる1つの意味でもあるので。目標にしてもらえたら嬉しいです」

 オフに単身渡ったドミニカ共和国では、ダイヤモンドバックスのケーテル・マルテ外野手と自主トレ。得たものは大きく「嘘やろって思っていたこともあったんですけど、いってみて『なるほど』って理解できた部分もあった」と振り返る。普段から「メジャーしか見ていない」というほどだが、今季から挑戦している千賀滉大投手(メッツ)の存在も刺激だ。ある日、テレビで千賀の特集を目にしたという。

「この前まで近くで見ていた人が向こうにいっている。それこそ抑えた時に(ピート・)アロンソとか(スターリング・)マルテとかそんな名前のある選手とベンチでハイタッチをしているのを見て、テレビを見ていただけでしたけど鳥肌が立ちました。めっちゃかっこいいなって思いました」

 今はファームにいても、いつかもっと大きな夢を与えられる選手になりたい。ファンを感動させる野球は、世界と心をつないでいく。

(竹村岳 / Gaku Takemura)