サイドスローに転向し“ポスト嘉弥真”を目指す育成3年目の大城
大先輩たちに必死に食らいついている。宮崎市にある生目の杜運動公園。ソフトバンクの森唯斗投手、嘉弥真新也投手が行う自主トレに、1人の育成左腕が参加している。今季が3年目となる大城真乃投手。嘉弥真と同じ沖縄県出身の20歳だ。
沖縄・宜野座村出身で宜野座高から2020年の育成ドラフト7巡目でソフトバンクに入団した。まだ2軍での登板はわずか1試合。昨季は3軍戦で29試合に登板し、5勝9敗1セーブの成績だった。シーズンを終えると一念発起。同郷の先輩である嘉弥真を目指し、これまでオーバースローだった投球フォームをサイドスローに変えた。
嘉弥真といえば、球界を代表する“左キラー”のサイド左腕。昨季は56試合に投げて0勝0敗28ホールド、防御率0.99と驚異の成績を残した。大城は秋季キャンプでサイドスローに転向し、嘉弥真に自主トレ参加を志願。「何も分からない状態で始めたんですけど、フォームとかも細かく指導してくれています」。自身もオーバースローからサイドスローに転向した経験を持つ嘉弥真から、手取り足取りイロハを教えてもらっている。
大きな収穫になった教えは、体の使い方だという。「サイドスローなんですけど、上体はオーバースローの形で投げるということ。腕だけをサイドで投げる」ということ。「サイドを意識しすぎて、体が潜ってしまっていたんです。そうすると全然ボールに力が最後まで伝わらないんです」。師匠からの助言で確かな変化が生まれた。
「最近のピッチングとかでも結構ボールが良くなったし、球が強くなったりするのを実感しています。徐々に手応えは出てきています」。もともと真っ直ぐの力強さ、キレを高く評価されて育成指名された。持ち味を残しつつ、サイドスローという特徴が身につけば、大きな武器になる。
先駆者である嘉弥真も大城のポテンシャルの高さを感じている。おとなしいのキャラクターで「おっとりしていて、ご飯を食べている時もいるかいないかわからない感じ」と笑いつつ「(ポテンシャルは)高いです」と認める。「自分で感覚を掴んで分かるようになれば、めちゃくちゃいいと思います。(自分を)超えます、余裕で。だから、完璧に教えることは教えておきたいと思います」。後継者として大きな期待を抱いている。
大城は今年が育成3年目。シーズンが終われば、育成規約により自動的に一度、自由契約となる節目の1年だ。「今年は大事な年ですし、サイドスローで1年、勝負していく。(この自主トレで)進化した自分が出てくると思うので、嘉弥真さんにいろいろ教わって、嘉弥真さんの次を狙えるように頑張っていきたい」。大城真乃、今年のファームで楽しみな存在の1人だ。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)