オフに入りショートの練習を開始「とにかく支配下に」
声高らかに今年の目標を宣言した。「とにかく支配下になって1軍で活躍することです」。こう力強く言葉を並べたのは、育成2年目になる仲田慶介外野手だ。
2021年の育成ドラフト14位。指名された128人の中で“最下位”で入団した昨季は、下克上の始まりに相応しい猛アピールの1年になった。ウエスタン・リーグで36試合に出場して打率.268。攻守に渡って存在感を示し、小久保裕紀2軍監督もたびたび「仲田」の名前を口にするほど、その姿勢やポテンシャルを高く評価していた。
仲田は今オフ、1年間怪我をしない身体作りを中心にしながら、守備、打撃両面で1軍で戦える技術の習得を目指してきた。打撃面では「よりボールを長く見ること」を意識して取り組み「打率、出塁率を残すには、ボール球を振っていたら率は上がってこない。より自分の体の中で打つ、というか。どうしても前に行ってボール球の変化球を振って三振とかが多かったので。引き付けた中で150キロも打ち返せるような打ち方というか。技術的にはそういうところをやっています」という。
守備に関してはもともと外野手登録でありながら、ショートの守備練習に時間を割いてきた。昨季出場した2軍戦のほとんどでは、二塁のポジションについた仲田。今後は、より一層ユーティリティ性を高めるため、遊撃も守れるようにと精力的に取り組んできたという。
小久保裕紀2軍監督からは「牧原(大)みたいなユーティリティになれたら」と理想を掲げられた。「ショートが出来たら強みになる」と考えた仲田は、昨秋からコーチに助言を求めたり、ノックでも打球を多く受けたりと、ひたすら練習を重ねてきた。
年末年始には福岡大時代の同期で主将、遊撃の名手でもあった永江大樹(現パナソニック)にもアドバイスを求めた。「力が入り過ぎていると言われました。もっと脱力した方がいいと。足の使い方も。ショートだったら足を使って投げないと1年間肩が持たないよと」。信頼するキャプテンも仲田の進化に力を貸してくれる1人だ。
積極的に技術を磨く仲田だが、もともとは外野手である。強肩が魅力の選手として入団したが、チーム事情もあって夏頃から二塁手として試合に出場するようになった。ほぼ未経験のポジションだったにも関わらず、仲田は無難どころか、好プレーも度々見せ、信頼を勝ち取った。
「セカンドは割と待っても距離も近いので、ちょっと余裕がありました。そこまで慌てることなくやれました」と突然のコンバートにも動揺はなかったよう。不安どころか、チャンスを前に、目を輝かせながらチャレンジを楽しんでいた。今季が2年目。貪欲な“野球少年”はコツコツと自身の武器を増やし、充実のオフシーズンを過ごしている。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)