石塚綜一郎が抱く危機感「キャッチャーのところが僕の中で一番の課題」
ちょっぴり異質な自主トレを行っている育成選手がいる。今季が育成4年目となる石塚綜一郎捕手は現在、森唯斗投手、嘉弥真新也投手らが宮崎市内で行う自主トレに参加している。同じ育成の大城真乃投手、ヤクルトの成田翔投手、楽天の福森耀真投手と石塚以外は全員が投手。野手にも関わらず、ただ1人、投手の自主トレに飛び込んだ。
普通であれば、投手は投手、野手は野手と同じポジションの選手が集まって自主トレを行うもの。1月の体力強化は投手も野手も重なる部分はあるが、一方で投手は投げること、打者は主に打つことも練習の中心になる。投手と野手では練習メニューで異なる部分が出てくる。
そんな中で石塚はあえて、投手である森の自主トレへの参加を願い出た。「バッティングではいいところが出てきたんですが、キャッチャーのところが僕の中で一番の課題だった。吉鶴コーチとも相談して森さんのところがいいんじゃないか、と。いろいろ話を聞いたり、見てもらったり、一緒にやったりして、キャッチャーとしてレベルアップしてこい、と」。
岩手の黒沢尻工から2019年の育成ドラフト1巡目で入団した石塚。育成3年目の節目の年だった昨季はウエスタン・リーグで25試合に出場して打率.259、2本塁打とまずまずの成績を残した。その一方、17試合でマスクを被り、2つの捕逸を記録するなど、キャッチングやブロッキングといった捕手の能力には課題を残しており、その課題を克服するために、投手陣との自主トレを決めた。
当然、自主トレを進めていくのは簡単ではない。森が主宰しているだけに、当然、練習メニューは投手のためのもの。打撃練習や守備練習は組み込まれていない。「森さんがやっているので、そこに迷惑がかからないようにやろうと思っています。休憩のときに早く出て行って打ったり、隙間時間で捕手の練習をしたり。休み時間を削って、時間を作ってやっていく感じです」。休憩時間や昼食時間の合間を縫って石塚は打撃練習や守備練習にも取り組んでいる。
まだ体力強化が主の段階ではあるが、すでに森や嘉弥真ら投手陣はブルペンでの投球練習も始めている。石塚もマスクを被り、彼らのボールを捕っており「キャッチャーとしてレベルアップしたいなと思ってお願いした。技術的なところではこういうところが大事なんだな、こういうところを意識してるんだと、すごく勉強になっています」と徐々にその成果を感じ始めている。
育成3年目を終えて一旦、自動的に自由契約となり、改めてホークスと育成契約を結んだ。これからは1年ごとに自由契約となり、1年1年が勝負の年。石塚も「すごくアッという間の3年間でした。3年目が勝負だと思ってて、もう全然結果が出なかった。その3年目をもっと糧にして、本当に上を目指していかないといけない年になってくる」と背水の覚悟で2023年に挑んでいる。
今季からは4軍制も新設され、育成選手だけで50人を超える。これまで以上に、限りある支配下の枠を争う競争は激しくなる。「諦めていたらダメだなと思うんで、上に行けるように、まずは2軍にずっといれるように、試合に出られるように頑張っていきたい」。危機感を抱く石塚。投手陣にもまれてレベルアップし、キャンプインを迎える。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)