「打つところはここじゃない」2軍で3戦連発も複雑…鷹リチャードが語る胸の内

ソフトバンク・リチャード【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・リチャード【写真:藤浦一都】

3戦連発4本塁打と結果を残すも、なかなか険しい1軍への道

 9日にタマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグの中日戦。「若鷹夏祭り」と銘打たれた一戦で、3試合連続となる本塁打を放ったのが、ソフトバンクの“未完の大砲”リチャード内野手だった。

 4点リードで迎えた3回の第2打席。中日の先発左腕・笠原の直球を完璧に捉えて左翼の防球ネットに突き刺した。これで6、7日に鳴尾浜で行われた阪神との2連戦に続く3試合連続アーチ。7日の試合では3ランを2本放っており、ここ3試合で4本塁打と状態を上げている。

 8月上旬ながら、ウエスタン・リーグの本塁打王に輝いた昨季の12本を超える13本目の本塁打。ただ、昨季以上の本塁打を放っても「半分嬉しいですけど、打つところはここじゃないなって思います」とリチャードは悔しさをにじませる。1軍ではなく、3年連続でファームの“本塁打王”へと突き進んでいることに複雑な思いも吐露した。

 3試合連続の一発は状態が上がってきている証と言えるだろう。リチャードを厳しく指導している小久保裕紀2軍監督も「バッティングの状態的にもだいぶ良くなってる。実際、7月から8月にかけての打率もだいぶ上がってきた」と話す。1割台に低迷してきた打率もようやく2割台に乗った。

 ただ、リチャードには満足するところはみじんもない。「まだまだです。同じことを続けるのが苦手なので」と、継続が苦手という自信の課題を自覚する。現在の状態についても「普通くらいじゃないですか。打ち損じもあるんで、悪いところも良いところも出てるんで、普通だと思います」と語っている。

 もともと本塁打が魅力だが、藤本博史監督からは確実性、打率の向上も指令として下っている。ファームで再出発した8月の打率は.364をマーク、4本塁打14打点と結果を残している。本人が語るように、これを継続できれば、十分に1軍で勝負できるのではないだろうか。

 これまでは本塁打以外の打席の内容が課題とも言われてきた。この日は第1打席に右翼への二塁打、第4打席では無死満塁の好機で変化球をとらえて犠飛を放ち、貴重な追加点を演出した。小久保2軍監督も「あの(7回無死)満塁での犠牲フライ。あっちの方が価値ありますね」と相手の追い上げムードを振り払った一打を評価していた。

 7月28日に登録抹消となった際、藤本監督からはファーストストライクを積極的にスイングしていくことを課された。リチャードは早速それを実践。この3試合で放った4本塁打の打席はいずれもファーストストライクからスイングにいっていた。全てを一振りで捉えられたわけではなく、一振りで仕留めるという課題は克服できたわけではないが、やろうとしていることへの意思を感じた。

 ファーストストライクから振りに行くことで手応えを感じる部分と、決め打ちのようになってしまう部分と、実践する中でジレンマも感じた。ただ、それも経験しなければ分からないこと。リチャードにとってはまた1つ、引き出しとなっているはずだ。本塁打を打っても苦言を呈されるなど、首脳陣から誰よりも厳しく扱われるリチャードだが、それは間違いなく期待の裏返し。期待を大きく上回るほどの圧倒的な結果を残し、1軍での居場所を掴んでほしい。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)