ソフトバンクが2012年から継続している3軍の韓国遠征。その根底には、若手選手にハイレベルな実戦経験を積ませたいという球団の強い思いがある。三笠杉彦GMは「(韓国は)2軍といえども強い。そうした相手と対戦できることが一番のメリット」と語り、国内では得難い経験の重要性を説いた。
「どのような環境でも自分のパフォーマンスを維持するという自己管理能力は、プロ野球選手にとって非常に重要です。その訓練として、普段とは異なる環境下でも、本拠地でプレーしている時と同様のパフォーマンスを発揮できるか。これをテーマに挑戦してほしいと伝えています」
現場からは長距離移動の負担や食事面での苦労といった声も届くという。しかし、三笠GMは「球団としても年々改善に努めている」と述べ、自身も現地に同行して環境整備を推進。「それらも全て含めて経験。厳しい環境を乗り越える力を養ってほしい」と、選手たちの成長に期待を込める。
遠征の根本的な目的である「強い相手と戦い、経験を積む」ことは、開始当初から変わらない。その一方で、近年は試合経験一辺倒ではなく、ウエートトレーニングや休養、トラジェクトアークのような実戦的練習も重視するようになった。3軍は試合経験中心、4軍はトレーニング中心としつつも、選手個々の状況に応じて柔軟に配置を変え、それぞれの課題に特化した育成を進めている。
数ある選択肢の中で、なぜ韓国なのか。三笠GMは「福岡を本拠地とする我々にとって、韓国は地理的に近いという利点がある」と説明する。その上で、海外という異なる文化や環境で実力を発揮する“国際経験”は、選手にとって大きな付加価値になると考えている。これは、プエルトリコや台湾のウインターリーグなど、他の海外派遣の際にも共通する育成方針だ。
今回の遠征は23日から始まり、9試合を戦い6勝3敗という成績を収めた。起亜タイガース戦では、相手の1軍本拠地であるKIAチャンピオンズフィールドでプレーするなど、選手たちは貴重な経験を積んだ。今後の展開としては、韓国以外の地域への遠征も検討。「アリゾナのフォールリーグみたいなのに行くだとかは、可能性としてはあるかなと思います」。アジアだけに留まらず、広い視野で今後を見据えているという。
三笠GMが繰り返し強調するのは、「なるべく強い相手と、良い経験を積んでほしい」という、まるで親心にも似た育成への熱意だ。厳しい環境下で強敵と渡り合う経験は、技術だけでなく精神的な成長も促す。この韓国遠征は、チームの未来を担う若鷹たちにとって不可欠なステップとなっている。