リハビリ中…若手に声をかけ続ける栗原
何気ない一言に、気遣いが溢れていた。「どこで髪切ったん?」。HAWKSベースボールパーク筑後の室内練習場で、19歳の張峻瑋(チャン・ジュンウェイ)投手に声をかけたのは栗原陵矢内野手だった。張が李易諭通訳を通じて「天神です。1000円カットより良いです」と返すと、周囲のチームメートもクスッと笑った。右脇腹痛のためリハビリ中の栗原だが、彼の周りにはいつも明るい雰囲気が漂っている。
栗原は本来、当然1軍にいなければならない選手だ。チームとしても彼の離脱は大きな痛手となっている。しかしリハビリ中、若い選手たちとコミュニケーションを取る姿がよく見られる。自身の現状を鑑みて「焦っています」と語りつつも、なぜ声をかけ続けるのか。「別にわざと話しかけているわけではないです。ただ……」――。栗原が明かす思いと、若鷹たちが受け取ったメッセージがあった。
「喋り相手になっている感じです。少しでも喋りやすくというか。上の先輩がいることによって、やりにくさであったりとか、ちょっと遠慮してしまう部分が出てほしくない。伸び伸びとやってほしいな、っていうのもあります」
先日も、キャッチボールでカーター・スチュワート・ジュニア投手から直球の握りを学び、ダリオ・サルディ投手には「調子どうよ! 日本語上手くなったね!」と声をかけていた。国籍を問わず、助っ人外国人とも積極的にコミュニケーションを取っている。
10歳年下の宇野も感謝…栗原から学んだこと
1996年生まれの栗原は今年で28歳。チームでも上から数えた方が早くなった。一緒にリハビリ組で汗を流すドラフト4位の宇野真仁朗内野手は2006年生まれで10歳の年齢差がある。「怖いじゃないですか。10個とか、7、8個離れている先輩ってあまり喋りかけられないじゃないですか」と栗原は意図を説明する。
宇野は1日の練習でノックを共にこなし、ハンドリングや守備中の足の使い方を学んだ。「会う時はある程度の緊張はありましたけど。最初から気軽に話しかけてくださったので。一流というか1軍のレベルに触れ合えるというのはいい機会だなと思います」と宇野は感謝する。
脳挫傷からの復帰を目指す生海外野手は栗原に「バッティングを教えてください」と直訴した。「自分から話しかけるタイプじゃないんですけど、栗原さんから話しかけてくれるので。とても優しいです」と喜ぶ。打撃談義では「目付の大切さ」を教わったという。「自分も目付を意識していたので、間違っていなかったことがわかってよかった」と納得の表情を見せた。
1軍は開幕3連敗と厳しいスタートを切った。栗原の離脱だけではなく、近藤健介外野手も出場選手登録を抹消され、チームにとってさらなる痛手となっている。一方で、みずほPayPayドームでのプレーを夢見る若鷹にとっても、技術や考えを学ぶ絶好の機会ともいえる。栗原の何気ない気遣いからは、ホークスの未来を担っている自覚が現れていた。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)