4年目ドラ1が今季初昇格も10打席ノーヒット…「中途半端な選手で終わっちゃう」
1軍の舞台で味わった強烈な「屈辱感」を胸に刻み、さらなる成長を遂げてみせる。4年目の井上朋也内野手が7日、出場選手登録を抹消された。7月30日に今季初めて1軍に昇格してからわずか8日間での降格となったが、そこで得た感情は何にも代えがたい経験とになった。
プロ初出場を果たした3年目の昨季は15試合の出場ながら打率.263を記録。プロ本塁打もマークするなど、2020年ドラフト1位が実力の片鱗を示した1年となった。今季も2軍戦では打率.294、3本塁打、25打点としっかり結果を残し、満を持して乗り込んだ1軍舞台だった。
「去年は全く通用しないということはないと感じられた1年だったので。今年は去年よりも結果を出したい」。そう意気込んだ21歳だったが、現実はシビアだった、出場5試合、計10打席でノーヒット、5三振。井上の胸に残ったのは、これまでの野球人生でも感じたことのない思いだったという。
「初めてっていうくらい屈辱的というか。今までにないくらいの思いが出てきて、自分でもびっくりして。『くそーっ』というよりも、屈辱やったっすね。恥ずかしい気持ちもあります、自分がこんなに野球が下手くそっていうのが……。悔しい思いは普段からもしますけど、ここまでっていうのはなかったです」
花咲徳栄高では甲子園出場も経験したドラ1が口にした強烈な感情。それはプロの世界で4年目を過ごしているからこそ生まれたものだ。「やっぱり1軍の選手はみんな、僕よりレベルが高い。まずは誰かに勝てる何かの武器を早く作らないと、中途半端な選手で終わっちゃうので」。21歳の表情は危機感に満ちていた。
初めて1軍の舞台に足を踏み入れた昨季と違い、今季のチームは優勝争いの主役として日々戦っている。そんな中で、昇格後は出場5試合のうち4試合でスタメンを任された。独特の緊張感もこれまでに経験したことがないものだった。
「雰囲気がひりついてるというか。去年も勝ちに向かっていく感じは一緒なんですけど、なんか違う感じがしますね」。昨オフに米アリゾナでともに自主トレを行った栗原陵矢内野手からは昇格した際に「よろしくな」と笑顔で声をかけられたが、試合に入った先輩の表情は全く違った。それが1軍で戦うことだと感じた。
今回の1軍昇格では自らのバットで存在感を示すことはできなかった。「やっぱりまだ(1軍で)出始めというか、まだ出場数の少ない選手なので。早く首脳陣に信頼してもらえるよう頑張るしかない」と歯を食いしばりつつ、再びファームでの戦いに戻ることとなった。
1軍でしか味わえなかった屈辱感を今後の「財産」にできるかは、自分自身にかかっている。「最終的には自分の経験値にしていかないといけないなと思います」。次に戻ってくる時は、大きく成長を遂げた井上の姿が見られるだろう。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)