ファーム首脳陣も絶賛する笹川吉康の“変身” 大きかった明石健志コーチの存在と言葉

ソフトバンク・笹川吉康【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・笹川吉康【写真:藤浦一都】

2020年ドラフト2位の笹川吉康外野手が1軍に合流した

 ソフトバンクの笹川吉康外野手が24日、PayPayドームの1軍本隊に合流した。試合前からフリー打撃やダッシュなどで調整し、広島とのオープン戦でもベンチ入り。藤本博史監督は「一応、体験みたいな感じ。会社の方から体験でベンチに入れてくれ、1軍の雰囲気を味わわせてくれってことで」と意味合いを明かしたが、途中出場を果たすと、8回2死一塁で打席にも立ち空振り三振に終わった。

 神奈川県出身で、横浜商高を経て2020年ドラフト2位でホークスに入団した。昨季はウエスタン・リーグで70試合に出場。打率.195ながらも4本塁打を記録した。1年目は左足の負傷などで思うようなプレーができなかったが「怪我が最近はないので、野球に集中できている。考えてやらないとうまくならないと思うので」。今は野球ができることを、全力で楽しみながら結果を求めている。

 194センチの身長に左打ち、驚異的な飛距離を誇ることから“柳田2世”とも呼ばれた。今年の1月には柳田と自主トレをともにするなど、自分自身もその背中を追いかけてきた。柳田といえば、約束したシーズンの成績をクリアすれば、何かしらの“ご褒美”を贈ることでも知られる。2022年シーズン前にはロッテの安田尚憲内野手、日本ハムの清宮幸太郎内野手に「打率.310か30本塁打」と設定していた。笹川に設けられたハードルは、どんなものなのか。

「『ファームでホームラン王を取って、1軍で初ホームラン』です。まだ始まったばかりなので、今回は2日限定と言われましたけど、チャンスがあればと思っています」

 照れ笑いで明かす笹川は柳田の存在についても「師匠です」と表現する。藤本監督は今回の合流に「いい状態で開幕を迎えられるようにしないといけない。そこでチャンスなんか与えている場合じゃないんで」と、主力の選手が最優先であることを強調していたが、チャンスは自分の力でつかんでみせる。柳田の存在がモチベーションになっていることは確かだ。

 春季キャンプ中、小久保裕紀2軍監督も明石健志2軍打撃コーチも笹川の姿勢を評価していた。連日、アーリーワークに参加するなど前のめりな姿でバットを振った。「明石コーチの存在も大きいです。自分1人ではあんなに続けられない。明石コーチにも毎日手伝ってもらって『絶対お前ならいけるから』と言ってもらって、自分でもそう言い聞かせて」と、期待を原動力に変えてきた。ハードな練習を重ねられたのも、自分自身を信じてきたからだ。

「このままじゃダメなので。極端に言ったら、全部が新しいフォームというか。変えていかないと、打てないのかなと。1軍にいくためには、どこかが間違っていると思う。研究というか、探しながらやっています」

 同世代でいえば、中日の高橋宏斗投手は野球日本代表「侍ジャパン」に選出され、WBCで世界一を経験した。笹川も貪欲な姿勢を強調する。「期待されていることは感じています。実際、近い年齢で活躍している人もいるので。若いからまだ……というふうには思っていなくて。打てればすぐに上がれると思うので」と語る表情は、今すぐにでも1軍デビューしたいと物語っていた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)