「家を決める」のも仕事の1つ 外国人選手を支える山田通訳が果たす役割とやりがい

ソフトバンク・山田雄大チーフ通訳(左)【写真:竹村岳】
ソフトバンク・山田雄大チーフ通訳(左)【写真:竹村岳】

入団17年目の山田雄大チーフ通訳…英語圏で50人以上の助っ人を担当

 外国人選手の隣には、必ず通訳の存在がいる。外国人選手と日本の心をつなぎ、支え続ける存在だ。ソフトバンクの山田雄大チーフ通訳は、ホークスに入団して17年目を迎えた。英語圏を担当し、50人以上の外国人選手とホークスのために戦ってきた。まさに“右腕”のような存在だが「めんどくさいと思うこともありますけど、大変って思ったら続きませんよ」と一切、苦には感じていない。

 山田通訳は東京都出身。大学を卒業して米国にいた際に知人の紹介を経て、ホークス入団のきっかけは訪れた。「ホークスが新しい通訳を探していると人づてに聞いて『興味があるなら話をするよ』と言われて『あります』と返事をしたのが最初です」と懐かしむ。2007年に入団すると「2010年くらい」からチーフのポジションを任されるようになった。

 シーズン中、本拠地でのナイター開催なら、山田通訳の1日は子どもの送り迎えから始まる。「6時半とかに起きます。そうじゃないとナイターの時は子どもたちに会えないので」。正午ごろに球場にくると、そこで選手とも顔を合わせるというルーティンだ。外国人選手が日本人と会話するのを手助けするだけではなく、生活面を支えるのも通訳の役割となる。

 移動をともにするのも仕事の1つ。電車やバス、新幹線や飛行機など、日本においてどんな交通網が存在するのかも、外国人選手にとっては初めてのこと。無事に球場までアテンドをするのも役割として担っている。もっといえば「彼らが来る前に通訳と国際部で用意して、選手たちに『ここがあなたの家です』というところまで」と、助っ人が来日する前に、福岡での住む自宅を決めるのも仕事だ。

 結果が全ての世界ではある。特に外国人選手は、結果を残せなければ、契約は結んでもらえない。山田通訳も、何度となく出会いと別れを繰り返してきた。「(寂しさは)ありますけど、仕方ないことですよ」。勇気を持って、日本での成功を求めて海を渡ってきた選手たち。通訳としてのやりがいに「よくみんな選手が活躍した時って言いますけど……」と言いながら、山田通訳なりの喜びを語った。

「選手が活躍した時も嬉しいですけど、帰国する時に笑顔で帰ってくれること。来年も会えるのかどうか、契約のことは僕には分からないじゃないですか。また戻って来られたらいいなというか、本人だけじゃなくて奥さんとかがそういうことを言ってくれることが一番嬉しいです」

 外国人選手は、日本人とはまた違うナイーブな一面も、ハートフルな一面も持ち合わせている。ちょっとした優しさで喜ぶのも、孤独に敏感であることも特徴の1つだ。だからこそ山田通訳は「家族が安心して暮らしていれば、彼らもハッピーで生活できると思う。それで(パフォーマンスが)上がるかわからないけど、家族のことは気に掛けるようにしています」。理解者となり、孤独を感じさせないように努めている。

「彼らがどれだけ、他のことを気にせずに野球に集中できるか。あと異国の地にいるということを、少しでも思ってもらわないようにというのは心がけています」

 球団によっては、選手別に担当の通訳を設ける。一方でホークスは「1軍」「ファーム」などで分かれており、山田通訳は主に1軍とスケジュールをともにしている。「うちは(選手別の)担当ではないので、2軍にいってしまうと接する機会がなくなってしまう。そういうのは本当は嫌です。できればずっと一緒にいられるのがベスト」と、常に心を通わせたいと強調する。

 グラウンド以外にも、勝利を目指す裏方さんはたくさんいる。数々の外国人選手を支えてきた中で、どんな外国人選手が印象に残っているのか。次回は最も“ホークス愛”を感じた助っ人右腕に迫る。

(竹村岳 / Gaku Takemura)